Yaglou らの WBGT 指標は実験式であり,人体に関する熱平衡式から導かれた式ではない.WBGT は被験者実験から得られた式であるから信頼性はあるが,実験をした時の状況や実験データのばらつきなどを考慮すれば,実験式だからと言って必ずしも全面的に信じられるとは限らない.
人は発熱体であり放熱体でもあるので,人体に伝熱理論を適用すれば WBGT と同型の式を導くことが出来る.
著者らは熱理論を基に WBGT と同型の式を導くと共に,WBGT の特性や温熱生理的意味を明らかにした.更に,人体側と環境側の主要 7 要素である,気温,湿度,風速,短波長と長波長の熱放射,着衣,代謝が熱ストレスに与える影響を評価できる,より合理的な WBGT の形を導いた.
本稿では,WBGT に関して,熱伝達論の観点から明らかになったことを概説する.