肝臓
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レポート
我が国における「急性肝不全」の概念,診断基準の確立:厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班,ワーキンググループ-1,研究報告
持田 智滝川 康裕中山 伸朗桶谷 真内木 隆文山岸 由幸市田 隆文坪内 博仁
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2011 年 52 巻 6 号 p. 393-398

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抄録

我が国の劇症肝炎は肝炎像を伴う症例のみを対象としており,欧米の急性肝不全とは疾患単位が異なる.また,その診断基準にはプロトロンビン時間の%表記を採用しており,INR表記を用いている諸外国とは整合性がとれない.そこで,厚生労働省研究班は,欧米の整合性に配慮した「急性肝不全」の診断基準を作成した.同基準では,正常肝ないし肝機能が正常と考えられる肝に肝障害が生じ,初発症状出現から8週以内に,高度の肝機能障害に基づいてプロトロンビン時間が40%以下ないしはINR値1.5以上を示すものを「急性肝不全」と診断することとした.また,肝性脳症が認められない,ないしは昏睡度がI度までの「非昏睡型」,昏睡II度以上の肝性脳症を呈する「昏睡型」に分類し,後者は初発症状出現から昏睡II度以上の肝性脳症が出現するまでの期間が10日以内の「急性型」と,11日以降56日以内の「亜急性型」に区分することにした.この診断基準に注記を併記し,従来の劇症肝炎との関連および成因分類を明確にした.

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© 2011 一般社団法人 日本肝臓学会
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