日本障害者歯科学会雑誌
Online ISSN : 2188-9708
Print ISSN : 0913-1663
ISSN-L : 0913-1663
委員会報告
歯科治療時の身体(体動)抑制法に関する手引き
一般社団法人日本障害者歯科学会ガイドライン検討委員会
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 39 巻 1 号 p. 45-53

詳細
抄録

はじめに:障害者歯科は,身体的および知的な発達,あるいは精神機能に障害があるために,通常の診察や指導,処置を受けることが困難な人を対象に診療を行っています.そのため障害者歯科では,さまざまな心理学的,神経生理学的,物理的・機械的ならびに薬理学的行動調整の技法を応用,駆使して安全に良質な診療が行えるよう努めなければなりません.

わが国で障害者歯科診療への需要と関心が本格的に拡大し始めた1965年頃から今日まで,障害者歯科診療においては身体抑制法も行動管理/体動コントロールとして広く応用されてきました.しかし,近年は新しい概念の心理学的アプローチや行動変容法,また静脈内鎮静法や全身麻酔法などの薬物を用いた行動調整が普及してきています.社会のすべての分野でグローバル化が進むなかで,障害者権利条約の批准国ともなった今日,わが国の障害者歯科医療では,これまで広く行われてきている身体抑制(体動コントロール)法に関しても,改めて見直しておく必要のあることが常に学会における懸案になっていました.

そのような背景のもと,理事長からの諮問課題として,「歯科治療時の身体(体動)抑制法に関するガイドラインの作成」が出されました.そこでまず,歯科治療時の身体(体動)抑制法の現状について2014年に本学会の代議員と会員を対象としてアンケートを行い,約140人から回答が寄せられました.また同じアンケートを台湾障害者歯科学会にも実施を依頼し,回答をいただきました.これらのアンケート結果を公表し,併せて第32回日本障害者歯科学会総会および学術大会(2015年)で意見集約を目的として,シンポジウムを行いました.

障害者歯科診療において「身体抑制」とはなにか,身体抑制法の長所と欠点,為害性と有益性,他の方法との代替性,患者を対象に診療行為として行われる身体抑制と要介護高齢者などを対象として看護/介護の領域で行う身体拘束との質的な違いなどは,検討すべき課題が多く,また社会情勢によっても常に変化しているテーマです.

このたび日本障害者歯科学会で「歯科治療時の身体(体動)抑制法に関する手引き」(案)を作成しました.まだ,ガイドラインとして公表できるほどの完成度には程遠く,また会員の多様な意見を完全に集約することも難しいため,「手引き」のレベルとして参考にしていただければと考えています.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本障害者歯科学会
前の記事
feedback
Top