日本集中治療医学会雑誌
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委員会報告
JRC蘇生ガイドライン2015 成人の二次救命処置:心拍再開後の集中治療,予後評価
日本集中治療医学会JRC蘇生ガイドライン2015 ALS部門作業部会
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2017 年 24 巻 2 号 p. 151-183

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抄録

成人心拍再開後の集中治療および予後評価における改訂の要点(学会担当分)を示す。
心拍再開後の集中治療
【呼吸管理】酸素化に関して,低酸素症の回避を推奨し,高酸素症の回避を提案する。また,心拍再開(return of spontaneous circulation, ROSC)後,動脈血酸素飽和度または動脈血酸素分圧が確実に測定されるまでは100%吸入酸素濃度の使用を提案する。PaCO2に関してバンドル治療の一部としてPaCO2を生理的な正常範囲内に維持することを提案する。
【循環管理】バンドル治療の一部として循環管理の目標(例:平均血圧,収縮期血圧)設定を考慮することを提案する。
【体温管理療法】ROSC後に刺激に反応がない場合は,体温管理療法の施行を推奨/提案し,体温管理療法を行わないことには反対する。体温管理療法は,初期ECG(electrocardiogram)波形が電気ショック適応の院外心停止に対しては推奨し,初期ECG波形が電気ショック非適応の院外心停止および全ての初期ECG波形の院内心停止に対しては提案する。体温管理療法施行時には,32~36℃の間で目標体温を設定し,その温度で一定に維持することを推奨する。体温管理療法を施行する場合は,維持期間を少なくとも24時間とすることを提案する。ROSC直後,急速な大量冷却輸液による病院前冷却をルーチンには行わないことを推奨する。体温管理療法終了後も昏睡状態が遷延している場合は発熱を防止し治療することを提案する。
【てんかん発作の管理】てんかん発作の予防をルーチンには行わないことを提案する。てんかん発作の治療を推奨する。
【血糖管理】標準的血糖管理プロトコルを変更せず適応することを提案する。
予後評価
【低体温による体温管理療法が施行されたROSC後昏睡患者の予後評価】ROSC後72時間以前に臨床所見のみで予後を評価しないよう提案する。鎮静や筋弛緩の残存が疑われる場合は,臨床所見を継続して観察することを提案する。 それにより予後評価の偽陽性を最小化することができる。単一の検査または所見のみを信用することなく,多元的な検査(臨床所見,神経生理学的な手法,イメージング,あるいは血液マーカー)を,予後評価のため使用することを提案する。予後不良を評価するには,ROSCから少なくとも72時間以後において,両側対光反射消失,もしくは両側の瞳孔および角膜反射消失を使用することを推奨する。予後不良を評価するためにROSCから少なくとも72時間後に計測された短潜時体性感覚誘発電位(short latency somatosensory evoked potential, SSEP)のN20波の両側消失を使用することを推奨する。予後不良を評価するために,BIS(bispectral index)の使用を避けるように推奨する。
【体温管理療法を施行していないROSC後昏睡患者の予後評価】ROSC後72時間以降における対光反射消失を予後不良の評価に用いることを推奨する。ROSC後から72時間以内でのSSEP N20波の両側消失を,予後不良の評価に用いることを推奨する。

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