2012 年 55 巻 10 号 p. 815-820
劇症1型糖尿病診断基準を一部改訂し,劇症1型糖尿病診断基準(2012)として提示した.本疾患において,急激な血糖上昇という疾患の本態を表現し,かつ見逃しを防ぐために,感度の高い基準が必要である.そこで,劇症1型糖尿病382例の発症時HbA1c値より,感度100 %となる最小のHbA1c値を算出し,「8.7 %(NGSP値)未満」という値を得た.この値はROC解析でも最適値であることから,新診断基準に採用した.その他,注釈として,「劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は,必ずしもこの数字(発症時HbA1c 8.7 %(NGSP値)未満)は該当しない.」,参考所見に「HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている.」,を加えた.他の項目については,現行診断基準の改訂を必要とする根拠となるようなデータは得られなかった.また,スクリーニング基準は引き続き有効と考えられるので,今回の改訂の対象とはせず,2004年に策定した基準を引き続き用いることとした.